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伊東光晴『アベノミクス批判』を読む(2) [時事]

 アベノミクスによって長年続いた不況からの脱出をめざす、と安倍首相は威勢よくぶちあげた。そのためには、大量の国債を発行し、それを日銀が引き受けるという禁じ手を使うのもいとわなかった。
 いま日本経済は毎日カンフル剤を投与しなければ生き延びられない病人のような状態におちいっている。それで元気が戻ってきたかというと、そうではなくて、病人はやはり病人のままのようにみえる。
 円安だからといって輸出がものすごく伸びたわけでもない。株は上がったかもしれないが、それでもうかったのはごく一部の関係者くらいではないだろうか。
 それでも、もっとカンフル剤を打てと騒ぐ安倍首相は、いったい何を考えているのだろう。かつての経済成長をもう一度とでもいうのだろうか。
 前回につづいて、本書を斜め読みしてみる。
 著者はいまの日本はかつての日本とはちがうと断言する。
 生産年齢人口がプラスからマイナスへと転じているのだ。
「日本の生産年齢人口のピークは1995年であって、2010年までの15年間に7%減っている」。その傾向はこれからもつづく。
 だとすれば、長期的には自然成長率がゼロになるのは、とうぜんだという。
 そのいっぽうで、現在、労働条件は着実に悪化している。非正規労働者の割合が増え、賃金は低く抑えられ、所得格差が拡大している。
 生産年齢人口の減少は、必需品市場の縮小をもたらす。
 家電製品などの耐久消費財もすでに普及しつくしている。取り替え需要があるとしても、新規需要のような勢いはないだろう。
 乗用車にしても、国内市場は縮小している。
 住宅の空き家率は、ますます高まっている。「人口減少社会の下では、住宅需要の減少も時間の問題であろう」と、著者はいう。
 新しい技術進歩によって、新商品が生まれ、それが新たな需要を喚起する可能性はある。しかし、それも限界がある。もういいかげん、モノはあふれかえっているのだ。
 それでも有効需要を増やそうとすれば、あとは公共事業くらいしかない。国土強靱計画や2020年の東京オリンピックは絶好のチャンスだ、とエコノミストは騒いでいる。しかし、それはいっそうの国債累積と、挙げ句の果ての財政破綻をもたらさないか、と著者は危惧する。
 輸出が増大しても、いまは恩恵を受けるのは輸出企業だけで、それが全体にまで広がらない。1960年代には、輸出増が経済成長をもたらし、社会全体で賃金が上昇し、それが有効需要を増やし、さらなる成長と結びつくというプラスの循環がみられた。いまはそうした状況ではなくなってしまっている、と著者はいう。
 著者によれば、いま求められるのは「成長願望ではなく、成熟社会に見合った政策であり、人口減少社会に軟着陸するための英知であり、……財政が黒字になる構造改革と、……若年者に悲惨な生活を強いる派遣労働を禁止し、福祉社会を志向することである」。
 著者は日本の財政の現状をみると、社会保障関係費を減らすいっぽうで、消費税を引き上げざるをえないとみている。
 社会保障関係費は、年金医療、介護、生活保護の4経費から成り立っているが、このうち減らせるのは年金だけだ。
 年金を減らす方法としては、年金支給年齢を65歳から70歳に引き上げること。ただし、そのためには、70歳まで働ける職場環境をつくらなければならない。
 いっぽうで、不公平税制の問題も相変わらず残っている。
 1990年代には法人税、所得税が引き下げられた。
 法人の7割が税金を納めていない。所得格差はますます広がる一方だ。
 労働政策も問題である。非正規労働者の割合が増えている。正社員になりたくても、正社員にしてもらえない非正規労働者が増えているのだ。その人たちの将来はいったいどうなるのだろう。不安が広がっている。
 25歳から31歳までをとると、非正規の比率は、1985年が男性3.2%、女性24.3%だった。それが2010年には男性13.3%、女性41.5%に拡大している。
 これが現実なのだ。非正規労働者の給与は正規労働者の3分の1といわれる。
「日本では、非正規雇用は、アルバイト家計補助、定年後の人に限られるべきで、若い人であってはならない」と、著者は提言している。
 安倍政権になって、労働政策はどんどん後退している。このままいくと、正社員の割合はますます減りつづけるだろう。
 何かと経済成長を口にするアベノミクスはけっして人びとを幸せにしているわけではないのだ。いまは経済成長の幻想を追うよりも、解決しなければならない課題に、ひとつひとつ丁寧に目を向けるほうがだいじなのではないだろうか。

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